多摩丘陵に遊ぶ 2022・1・4

小野路にはっきりと残る古道跡

■黒川駅から青少年野外センター経由で真光寺公園へ

小田急多摩線黒川駅前は閑散としている。目立つのは駅階段下の真っ青なアマゾンの受取ロッカーと妙にお洒落なローソンの建物だけ。40年前の造成したての荒涼とした様子を覚えているが、基本はその間家が建ち並んだだけということのようだ。坂を登り青少年野外活動センターへ。入口の散策路の看板をたよりに丘を登る。登ると尾根道に出て崖状の左手は大きな事業所の建物が並んでいる。そちら側はフェンスもあり、ここを越えると警備に引っかかって警察を呼ぶとの看板が掲示されている。社名からもハイテク系で機密情報を取り扱っているようだ。いつのまにか多摩NTは企業集積もなされていたのだ。その先は、眼下に住宅地が広がって、職住接近で暮らせたらいいなと思わせる。

■近藤勇も利用した布田道で黒川の田園を楽しむ

右手は林や畑で、普通の丘陵散策の風景だ。進めば真光寺公園。この天辺に出るので、再び住宅街を見下ろす光景に出会う。芝生を下って右手に曲がって幹線を渡ると、延々と霊園が広がっているが、その山側に「布田道」が通っている。近藤勇が野川公園近くの人見街道沿いの調布の家から、小野路の渡辺家に通った道とのことだ。左手に墓とその先の街を見下ろしながら歩くと、やがて巨大な変電所にぶつかりその周りに沿って歩くことになる。この田園地帯に突然現れるなかなかシュールな光景だ。墓もそうだが、普段我々の目に余りふれても・・という施設が、こうした郊外のそのまた僻地に置かれるということだ。市街化調整区域でもこうした施設は作ることができるという事情もある。

それにしても丘陵に残された田園地帯のほのぼのとした風景は圧巻である。こうした風景をいつまでも残したいものだと思う。幸いかな、都市化も限界のようで、この地を開発してしまうと保水が失われ、最近頻繁におこる線状降水帯等の激しい雨では鶴見川は氾濫し、河口域では家々が深く水没してしまうのだ。比較的早くこのことに気付き、残されたのが黒川や小山田の緑地帯である。温暖化もこうしたようなかたちで解決に向かえばいいのだが・・。

■別所信号から布田道で小野路の町へ

別所の交差点から現鎌倉街道を渡り布田道で小野路を目指す。谷戸の端が道になっていて切通を示す看板がある。ここは朝冷えるのだろう、もうすぐお昼だというのに、日陰は霜で白いままだ。切通は緩やかに登り、やや急に左手に回りながら下る。周囲は竹林だ。進めば田園が広がっていて右手が一本杉公園で左手が小野路の町だ。左手に進んでしばらくすると以前通った鎌倉街道の旧道が右手から合流し、しばらく進むと町の幹線だ。小野路の町並みは落ち着いていて素敵なのだが、何分自動車の交通量が激しい。左手に近藤勇が通った小島家を見て、早々に小野神社裏手の万松寺方面へ退散する。以前鎌倉街道旧道を訪ねた際は、小野路一里塚から野津田方向に進んだため、そちらの方まで行く余裕がなかったので、今回改めて再訪した次第だ。

■万松寺から小野路城跡の旧道で奈良ばい谷戸へ

旧道には地蔵が並んで歩行者を見守ってくれている。そして、その奥には万松寺谷戸が広がる。一部は田んぼや畑の農地として利用されている。少々散策してから小野路城跡方面の道を登る。今一つ谷戸の案内看板が分かりにくく、散策が長くなった。それはそれで良いのだが。登りの途中には農家もあるし、畑もある。フラットになって進むと両脇が土地の凹状の道になる。紛れもない古道の形状。そのまま進めば右手が小野路城跡だ。特に城跡は無いのだが上部は平らで屋代が置かれている。それにしても看板はあるが実に分かりにくい道標だ。元々一万分の一の地図でも分かり難く、現地で判断するしかないのだが、右手に下って、左におおきく回る道で、なんとか奈良ばい谷戸の表示。ここも竹藪がきれいだ。かなり人の手が入り保全されている。

■小山田緑地経由で鶴見川の源流を訪ねる

幹線を渡り、小山田緑地へ。池があるがここも大切な保水地である。北側を抜けてサービスセンターに出る。ここから鶴見川源流を目指すのだ。芝溝街道の大泉寺バス停に出て、後は街道をまっすぐだ。大泉寺は立ち寄る時間が無かったが、小山田氏の居館があったところとのことである。お昼を過ぎて日差しが強い。道が細いが大型が通るので怖い。小山田小の手前でようやく新橋を渡り鶴見川沿いに進めるようになる。せせらぎ公園からは整備された緑道だが、川は少し離れたところを流れている。かなり人の手がはいっていて、これは下流を守るためにも上流の護岸対策が重要で、そうそう自然のままのかたちで川を残せないという事情のようだ。川が溢れても、周囲に緑地を取ることで相当保水ができるようになっているようだ。小山田のバス停からは街道沿いに戻る。ますます道は狭くなり、車が離合するために人が車道から出なくてはいけないこともあった。ということで源流の泉に到着。この後に事件が起こる。

源流の泉といってもただの小さな池である。まあ、よくあることで妙正寺川を歩いた際の、妙正寺公園の池を思い出した。池は小川でいくつか連なっているが、最初の池の部分は公園にあり、公園の周りは鉄のパイプで厳重に囲われていて次の池には一旦街道に出なくてはいけない。次の池の雰囲気の方が良い感じなので、これもパイプがあるがパイプ越しに写真を撮っていた。なんでこんなにパイプで囲ってあるのだろうと思ったが、深く考えなかった。

ここで「気違い婆」が現れた。「あんた何やってるの!」と静謐な空気を劈く声。「看板が見えないのか!」「いや写真を撮っていただけですが。」「嘘だ。何をしている!!」と認めてくれない。どうも奥の家の人らしいが、池と池の間の道路上の土地の所有者らしい。80歳以下ということはないだろう。これは普通ではないと逃げるにしかずと離れようとするが、嘘つきの罵声を浴びせられ離してくれない。「こんなところ源流でも何でもない。」うぉー、その通りではあるが、髪の毛が逆立っているようだ。なんとか退散した。

この後、南大沢方面に抜けようかとも思っていたのだが、街道は九折の細い道になり、車も結構通るので右手に入る道に入った。少し心を落ち着かせよう、久々に本気の罵声を浴びて、自身も動揺していたようだ。「源流でない」という怒号が脳みそをフラッシュバックする。負けたくないと思った。この道を進めば本当の源流に近づく。少し進むと確かに水面が見えてきた。この先が源流だろう。しかし水面は森に隠れていき、山道は町田市の通行禁止の看板で遮られた。どうせなら先の泉に「狂人注意」くらいの看板を立てて欲しかった。それにしても「侵入禁止」のような看板は無かったような気がする。今となっては確かめようもないが。

■別所の給水塔からよこやま道で唐木田駅へ

結局心の平静を保つためにも、案内看板があった別所の給水塔への山道を進むことにした。自分の地図には表示されていない道だった。途中で散歩のおじさんとすれ違って挨拶する。給水塔が見えてくると結構うれしかった。気持ちもようやく落ち着いた。給水塔からは「よこやまの道」になる。若葉台の方まで続く尾根道だ。左下には南多摩尾根幹線道路が走っている。長池公園から京王線に抜ける方法もあるのだが、尾根道で気持ちが良さそうなのでしばらくこの道を歩くことにした。散策路になっているだけあり、歩きやすいし、尾根からの眺望が素晴らしいスポットもある。ただ歩いてみて尾根道はやっぱり風が強いことが分かった。本当の山の尾根道はさぞかしと思う。自分にはこの程度の尾根でちょうどいいかなと思う。

結局この日は頑張って歩いて、始発でもあるし唐木田から小田急に乗り新宿へ出ることに。唐木田到着は15時位で、相変わらず駅前に飲食店は無く、お腹が減っていたのでファミマでサンドイッチを買ってホームで食べた次第であった。15~20キロの徒歩旅行であった。たいへん満足した。

見返りした切通

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です